初めて弁護士に依頼される方

1.はじめに

法律相談をお受けしていると、弁護士に相談や依頼をした経験がなく、不安そうにされている方とお会いすることがあります。
私自身、この職業に就くまで身近に弁護士はいませんでした。一般的に考えても、何度も弁護士に相談・依頼した経験がある人の方が少ないと思います。
利用した経験がなければ、弁護士に何を相談していいのか、何を頼めばよいのか分からないという方も多くいらっしゃると思います。
そこで、初めて弁護士に相談・依頼する方に向けて、弁護士とはどういう仕事をしているのか、弁護士に依頼するとどういうメリットがあるのか、弁護士費用の比較・検討の方法、等々についてまとめてみました。
よろしければ参考にしてください。

2.弁護士の仕事とは?

弁護士の業務には、様々な分野・種類があります(代表的な分野としては刑事事件、交通事故、離婚、相続等です)。
これらの弁護士業務の共通項は、「ご本人のために、法的な事務作業を代行(代理)する仕事」という点だと思います。
例えば、離婚や相続等の家事事件では、ご本人に代わって、相手方と交渉したり、調停や訴訟を裁判所に提起したりします。
交通事故であれば、被害者に代わって、相手方保険会社と示談交渉をする、損害賠償請求の訴訟(民事裁判)を提起する等になります。
法的手続というと難しそうですが、ひとつひとつの文章でのやりとりが主体となります。そのため、弁護士の仕事の大部分は書面作成等の事務作業です(どちらかと言うと、地味な仕事が多いです)。
書面作成以外には、相談・打合せ、関係者との連絡(電話・ファックス・メール等)、法律文献のリサーチ、証拠資料の収集・調査活動、裁判所への出廷、現地に出かけて見分等もあります。
このように、弁護士は、法律手続を進めるために様々な事務作業を、依頼者のために代行する、「事務作業の代行業」だと思っています(あくまで私の意見ですので、他にも色々な考え方があると思います)。

3.弁護士に依頼することでどういうメリットがあるか

では、弁護士に依頼することで、どういったメリットがあるのでしょうか。

①事務作業に伴う負担を軽減できる

法律手続の当事者はご本人様ですから、ご自身で事務作業を行い、自分で手続を進めることもできます(刑事事件はそうはいかないかもしれせん)。
しかし、慣れない事務作業を行うのには時間的・労力的な負担が伴います。場合によっては、自分で調べものをして、慣れない事務処理を行うことが難しいこともあるでしょう。そういった場合にこそ、弁護士に依頼するメリットがあると思います。
反対に、簡単な作業で済むならば、あえて弁護士に依頼しなくてもよいケースもあります。
もし、あなたが悩んでいる問題が弁護士を依頼した方がよいのかが分からない場合は、まずは法律相談を利用してみてはいかがでしょうか。
法律相談では、どういった法的手続をとる必要があるのか、その法的手続を進める上でどのような事務作業が必要なのか、その作業をするのにどれくらい負担(時間的・労力的・能力的)がありそうか質問してみるのが良いでしょう。

②精神的な負担の軽減

相手方がいる場合、当事者の方にとっては、対立している相手方との連絡は大きな精神的負担になります(場合によっては当事者同士の接触は危険なこともあります)。
そういった時、弁護士を代理人にすることで、自分の代わりになる連絡窓口を置くことができ、相手方と直接接触するストレス・リスクを軽減することができます。
また、弁護士は、あなたが悩んでいる問題を一緒に解決していくパートナーです。一人で悩むよりもパートナーと相談しながら進めていく方が安心できるでしょう。

③あなた側の視点に立った分析やアドバイスをきくことができる

法律手続を進めていく上では、法律の専門家達(裁判官、相手方の弁護士、検察官など)が登場します。
しかし、裁判官は中立の立場でなくてはなりませんし、相手方の弁護士や検察官は相手方の立場に徹しなくてはなりません。
そのため、彼らがあなたの側に立ったアドバイスをしてくれるとは限りません。

あなたが弁護士を依頼した場合、あなたの味方に立つ専門家から、以下のような分析やアドバイスを受けることができます。

  • あなたがどのような法律手続をとるべきか。
  • その法律手続の流れやどのように手続が進むのか。
  • どういったリスクが考えられるのか。
  • その手続を行うことでどのような結果(リターン)が期待できるのか。
  • あなたが有利になるようにするにはどういう対策をとるべきか。

もし、あなたが悩んでいる問題が法的に複雑であるならば、あなたの側に立ってくれる弁護士がいた方が心強いですね。

4.弁護士費用の相場とは?

(1)弁護士費用は自由に定めてよい

以前は、「日本弁護士連合会報酬等基準」(いわゆる「旧日弁連報酬基準」)があり、事件分野ごとに報酬基準が一律に定められていました。
しかし、現在は、旧日弁連報酬基準は廃止され、依頼者と弁護士との間の委任契約で自由に弁護士費用を取り決めてよいことになっています。

(2)旧日弁連基準はもう意味がない?

一律のルールとしては廃止されたとはいえ、旧日弁連報酬基準と同じ費用体系そのまま続けている弁護士は今でも大勢います。
そのため、旧日弁連報酬基準は、現在でも一般的な弁護士費用の指標になります。
もし、あなたがその事件の一般的な弁護士費用の目安を知りたければ、旧日弁連報酬基準ではどのように報酬基準が定められているのか調べてみると良いでしょう。

(3)具体的金額を確認したいとき

先述のとおり、現在は、弁護士費用は法律事務所によって様々です。
ホームページ等で料金表を掲げている場合もありますが、ご自身の場合に費用がいくらかよくわからない場合もあるでしょう。

そういう場合は、法律相談の際に、ストレートに聞いてみましょう。少々聞きづらくても、どのような料金体系なのか、具体的にいくらかかりそうか率直に尋ねてみるべきです。
弁護士の報酬制度は出来高に応じて決まることもあるため、具体的な数字を出すことはできない場合もありますが、少なくとも例示を出してシミュレーションをすることはできると思います。

また、依頼をする前に見積書を出してもらうのも良い方法です。
いずれにしても、きちんとした弁護士であれば、費用の点はしっかりと説明してくれるはずです(反対に費用基準についてあいまいな説明しかしない弁護士は注意した方がいいと思います。)。

5.依頼した方がいいのか考える際の視点

弁護士に依頼することで得られるメリット、依頼した場合にかかるコストをある程度把握できたとします。
あとは、依頼することで得られるメリットと、かかるコスト(弁護士費用だけではなく、ご本人にも労力や時間の負担がかかることもあります。)とのバランスがとれるのか、比較・検討して頂ければと思います。
依頼するべきかを考える際の視点

6.どのような弁護士を選べばいいのか?

せっかく依頼するのであれば「良い弁護士」に依頼したいと思われることでしょう。
しかし、「良い弁護士」であるかは、ご依頼者様によっても変わってきます。
例えば、物事をはっきりと言うタイプの弁護士がいたとして、「分かりやすくて正直な人。」と感じる人もいれば、「言い方が厳しい。なんだか怖い。」と感じる人もいます。
また、弁護士の能力にも様々な要素があるため、一律に比べることが難しい面があります。
例えば、長いキャリアがある弁護士は経験豊富といえるかもしれませんが、若い弁護士の方がフットワークや情熱があるかもしれません。
仕事の中身や出来で比べようとしても、法的な書面の良し悪しを一般の人がすぐに見分けることは難しいとも思われます。そもそも事務処理能力が高ければ良い弁護士なのかも異論がありうるところでしょう。文章力や事務処理は一流でも、依頼者とコミュニケーションがとれない、対立する相手に立ち向かえない等の弁護士では、良い弁護士とは言えないかもしれません。
このように、どういう弁護士が良い弁護士なのかは、ご依頼者様や事案によっても変わってきます。
結局のところ、人と人の相性が大事だと考えています。
まずは実際に法律相談をしてみて、その弁護士に事件について話し、アドバイスを聞いてみる、その中で話がしやすいかなど弁護士との雰囲気等も確かめてみる。そして何人かの弁護士と比べてみるのが最も良い方法ではないかと思います。

7.こういう弁護士には注意!

どういった弁護士が良い弁護士なのかは難しい問題ですが、反対に、以下のような弁護士には注意した方がよいかもしれません。
  • あなたが悩んでいる問題について、どういった手続を使って、どういった解決が見込めるのか調査や説明を十分してくれない。
  • 「必ず~できる。」「必ず~なる。」等の結論や結果を断定するような説明、言い方をする。
  • 弁護士費用に関しての説明が明確ではない。
  • 依頼をする際に委任契約書を作成しない。

8.信頼関係が大事

ここまで、弁護士に相談依頼するときの注意点等を色々と書かせて頂きました。他方で、弁護士の方も、相談者・依頼者の方とお話しするなかで、いっしょに問題を解決していけるのかと注意を払っています。
ご依頼者様と弁護士は、いっしょに問題解決をするためのパートナー同士です。
お互いに誠意に尽くし、互いの意見を尊重し合い、人間同士の信頼関係を築いていくことが大切だと思っています。